サスケが糖尿病になった 続き
ドクターコラム
サスケが糖尿病になった ~続き
先の主治医に連れて行くと血液検査され‘血糖値は435である’と宣告された。
どうするかと主治医と鳩首会談となった。猫に食事療法など期待できる訳はなく、この
血糖値などよりインスリン注射しかないと意見は一致した。
彼は猫に効くのはこのインスリンで今は市販されておらず、海外からの個人輸入になるという。
私は新しいインスリンを使うことを提案した。
飼い主の責任でということになり猫に一日何回も注射はできないと考え、作用時間の長い
インスリンを選択した。この日から寝る前にインスリン注射をするのが私の(そして家内の)日課となった。
翌月の盆休みが終わる朝のことである。
休日明けの朝は起きがけの気分はすぐれないものだが、その気分をかき消すように家内の
金切り声が聞こえてきた。‘サスケが!’
駆けつけてみるとサスケは半ば意識がなく、よだれを垂らし痙攣を繰り返していた。
低血糖だ!すぐに砂糖を水にとかし注射器で口から飲ませた。もともと持病のあったサスケに薬を与える注射器は身近にあった。
私は診療所に行かねばならず、家内と帰省していた息子が主治医の元に急いだ。献身的な
治療の甲斐があり三日後に退院となった。
獣医学部の学生は役に立ったのかどうか。私の誤算は猫に簡易の血糖検査ができないこと
であった。そのため、いわばインスリンがめくら打ちになっていたのだ。
まだふつうとは違うサスケを前にして思わず心からわびた。
今、横でサスケの鳴き声が聞こえる。
糖尿病を発症して減った体重は元に戻らない。
息子はこの四月より獣医師としての第一歩を踏み出した。サスケに身内の主治医ができた
ことになる。
サスケはいつまで私の伴走者でいてくれるだろうか。