糖尿病の飲み薬 No.2
ドクターコラム
「このようにしてインスリンは分泌される」
糖尿病ではインスリンの働きが悪くなっています。
日本人の糖尿病においては膵臓からのインスリンの分泌が低下していることが特徴です。特に食後に血糖が上昇することに 対応する追加分泌が低下していることが問題です。(追加分泌についてはカーボカウントのシリーズで説明しました)
この追加分泌を促すのは血糖上昇です。
血糖が高くなったことは直接膵β細胞に伝わりインスリンが速やかに分泌されます。 この時に細胞内にカルシウムが動員されます。
この仕組みは皆さんもお聞きになったことがあると思います。
前回のコラムでふれた膵β細胞を直接刺激してインスリン分泌を刺激する飲み薬(スルホニル尿素薬といいます)は、この経路の一部に働いてインスリン分泌を促します。
今まであまり患者様に話すことがなかったと感じているのですが、もう一つ食後インスリン分泌を刺激する経路があります。それがインクレチンを介するものです。
インクレチンは食事摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進する消化管ホルモンの総称です。それが食後の
血糖上昇時インスリン分泌をさらに刺激します。
胃や腸が作るホルモンを消化管ホルモンというのですが、胃や腸がホルモンを作り分泌し、いわば遠隔操作よろしく他の臓器の いろいろな機能を調節していることをご存じでしたか?
インクレチン以外にも大切な消化管ホルモンがたくさんあります。
腸管の抽出物(すりつぶしたもの)が糖尿病を改善することは古くから知られていました。その実体がインクレチンです。
様々な消化管で産生されるホルモンがインクレチン作用を持つかどうか調べられ、小腸上部に存在するK細胞から分泌されるGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)と、小腸下部のL細胞から 分泌されるGLP-1(glucagon-like peptide-1)がインクレチンであることがわかりました。
ところでホルモンの名前はわかりにくいですね。多くは英語の名称の頭文字をとって略称されます。
アルファベットで、例えばGIPはジーアイピーと読んでください。
このような働きをするインクレチンが糖尿病の薬として有望であることはすぐにわかります。
インクレチン作用を持つ薬のデザイン(創薬といいます)はどのようにして実現されたのでしょうか?
次回で紹介します。