低血糖と血糖値を知る方法 No.3
ドクターコラム
「血糖認識トレーニング;BGAT」
その時その時の血糖値がわかると思いますか?
わかる(認識できる)はずだと考え、その能力を開発するために考案された教育システムがCoxらの「血糖認識トレーニング」です。BGAT(Blood Glucose Awareness Training)とも呼ばれます。
何も英語持ち出す必要はないのですが、アメリカの先生達がこのすばらしい教育プログラムを開発し、完成されたことに敬意を表したいと思ったからです。
BGATは系統的な教育システムです。その研修を受けたこともない私が紹介することは全容を正しく伝えることができないのではと恐れています。
しかし、BGATには低血糖の理解を深めるためのヒントに満ちています。
BGATは、元来1型糖尿病の患者を対象としたプログラムですが、どのような方にとっても内容を知っていただくことが低血糖の診断と対策に有効であると考えます。ここで取り上げる所以です。
「診断と治療社」からアメリカの患者のためのBGATのテキストの翻訳が出ています。それに基づいて説明していきます。
血糖値を認識する手がかり(血糖値を知る手がかりのことをキューといいます)を教育し、実測値との誤差に基づきフィードバックを行い、認識‘力’を向上させるシステムです。特に低血糖の予防を目指します。様々なキューを利用し、例えば昼食前の血糖値を予測します。
すぐに血糖自己測定をします。予測値の正確さをエラーグリッドというものさしを用いて判定します。
エラーグリッドは、予測値と実測値がどれだけ近かったか・外れていたか?また外れていたときはその程度はどうか?を判定するグラフのようなものです。
予測が許容範囲を逸脱していたときが大切です。予測の誤った理由を考えていきます。それはそのとき利用したキューを見直すことにより行います。
予測値が105mg/dlで実測値が62mg/dlであった場合は低血糖を見逃したことになりますね。そこで胸に手を当ててふりかえります。
朝食の量がいつもより少し少なくなかったか?午前中の‘力仕事’がいつもより多くなかったか?朝食前のインスリン量がいつもより多くなかったか?などふりかえります。
これらの行動と考察を「血糖日記」に記録していきます。
このフィードバックの過程を記録した血糖日記が、 血糖値認識の‘力’を向上させる情報の山になっていきます。