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当院ではCGM(持続血糖モニター)に対応しております。
ドクターコラム
当院ではCGM(持続血糖モニター)として以下に対応しております。
◆リアルタイムCGM
①ガーディアンコネクトシステム
②DexcomG6CGMシステム
③ミニメド770GシステムによるSAP
◆間歇スキャンCGM
FreeStyleリブレ
又インスリンポンプとしてミニメド770Gシステムを採用しています。
当院にお気軽にお問合せ下さい。
甲状腺の病気と遺伝
ドクターコラム
バセドウ病や橋本病(慢性甲状腺炎)の方を診療していてよく聞かれる質問の一つに「私の病気は遺伝するのですか?」と言うのがあります。
私もおばあさん、娘さん、お孫さんの3世代に渡って甲状腺の病気を診ているご家族があります。
女性に多い病気ですが遺伝もある役割を果たしています。
最近のドイツの研究では橋本病の患者さんの子供や兄弟が橋本病を発症するリスクはそれぞれ32倍と21倍と言うことです。
また、一親等の中に少なくとも1人バセドウ病の方がいられる家系を調べた日本の成績があります。そうでない家系に比べてバセドウ病になりやすさは19−42倍だったそうです。
姉妹やおばさまや女のいとこの方が橋本病やバセドウ病にかかっておられる女性の方におすすめします。成人式を迎えたときやご結婚が決まられた時などの人生の節目で適宜甲状腺の検査を受けられてはいかがでしょうか?
1型糖尿病のミニ糖尿病教室第4回
ドクターコラム
1型糖尿病のインスリン治療とカーボカウント応用編 その3
食前血糖が目標値より高い場合は第3回で述べたインスリンカーボ比から求めたボーラスインスリン量では足りません。それだけでは食後血糖は食前の高いままです。さらに追加インスリン(補正インスリン)が必要になります。食前血糖の高さに応じた追加分が食後血糖に影響するので大切です。この追加量の調整が難しいと思います。
そのために必要なのは自分のインスリン抗価値を知ることです。
インスリン抗価値は1単位のボーラスインスリン量でどの程度血糖が下がるかを言います。
計算式の一例を紹介するとCSII(インスリン持続皮下注入療法)で治療している1型糖尿病を対象にしたアメリカでの成績があります。一番血糖コントロールのよかった患者から導いたインスリン抗価値の計算式は以下でした。1960÷TDD 。つまり1日30単位のインスリンを使っておられる方は1960÷30=65となります。すなわち1単位のインスリンで65mg/dl血糖を下げることができます。食前血糖が食後血糖(ボーラスインスリンの効果が切れたとき)の目標値より高い分だけインスリン抗価値から求めたインスリン量を追加します。
最初はわかりやすくインスリン抗価値50からはじめましょう。
1型糖尿病のミニ糖尿病教室第3回
ドクターコラム
1型糖尿病のインスリン治療とカーボカウント応用編 その2
前回で食事のカーボ量の計算を学びました。次に食前の超速効型(ボーラス)インスリン量を決めましょう。食後血糖コントロールの見直しの場合も同じです。
まず自分の適切なインスリンカーボ比を知る必要があります。インスリンカーボ比とは何グラムのカーボあたりボーラスインスリン量が何単位必要かということを示すものです。
最近、糖尿病学会から出た専門医チームの提言では300−400ルールを用いるのが適切であるとされています。まずI日総インスリン量(TDDと略します)を求めます。1日に注射しているベーサルとボーラスのインスリン量を足した量です。インスリンカーボ比は例えば300をTDDで割ること(300ルール)で計算出来ます。例えばTDDが30単位の方では300÷30=10となります。10gの炭水化物あたり1単位のインスリンが必要ということです。
ご飯150g食べる時はそれによる食後血糖を下げるため15単位注射する事が必要です。
まず、わかりやすくインスリンカーボ比=10から始めましょう。
1型糖尿病のミニ糖尿病教室第2回
ドクターコラム
1型糖尿病のインスリン治療とカーボカウント応用編 その1
1型糖尿病のミニ糖尿病教室第2回です。MDI(強化インスリン療法)やCSII(インスリン持続皮下注入療法)においては食前の超速効型インスリン量(ボーラス量)を適切に調節すること大切です。そのための必須のツールがこれです。しかし患者さんによって習熟度に差がある事も事実です。一から始めましょう。
カーボカウント応用編とは、食前血糖値とこれから食べる食事の炭水化物量(カーボハイドレイト略してカーボ量)から、血糖値を目標範囲に保つために、食事時のボーラスインスリン量を調節することです。
第1ステップは炭水化物量の見積もりです。これには黒田暁生先(徳島大学糖尿病・臨床開発センター )が考案提唱された簡易式を使うのが便利です。
まず主食のカーボ量です。ご飯の場合は重量(g)の40%がカーボ量(g)、もち・パンの場合は重量の50%、またゆで麺・いも類では重量の20%をカーボ量として計算します。
ご飯100g食べるときのカーボ量は40gになります。
副食ですがどのような献立でも副食のカーボ量は大体一定で20gと計算します。(副食に果物含む)
簡易式を利用してもご飯などはやはり秤で測る必要がありますよ。
副食(おかず)のカーボ量を計算に入れるのを忘れる方が多いので注意しましょう
さらに一つ一つの食材のカーボ量を見積もることが望まれますが、それについてはいい書物がいくつか出ていますので是非ご覧いただきたいと思います(例えば、佐野喜子著「カーボカウントナビ」エックスナレッジ社など)。
1型糖尿病のミニ糖尿病教室第1回
ドクターコラム
MDI(強化インスリン療法)からCSII(インスリン持続皮下注入療法)へ
9月10日付けのドクターコラムでは、1型糖尿病のインスリン治療についてたくさんの内容を一度にまとめすぎたように感じましたので一つ一つ分けて話したいと思います。いわば、1型糖尿病のミニ糖尿病教室です。
第1回は先のドクターコラムでもふれましたように1型糖尿病インスリン療法に必要な3本柱の一つであるCSIIについてです。1型糖尿病治療における位置づけについて述べたいと思います。
1型糖尿病のインスリン療法としては持効型インスリン(ベーサルインスリン)と食事ごとに超速効型インスリン(ボーラスインスリン)を用いる強化インスリン療法(MDI)が主流です。 1日4回以上注射が必要です。
CSIIでは皮下に留置した細く柔らかいカニューレを通して持続的にインスリンを注入するインスリンポンプを使います。基礎インスリンの補充は連続的に少量ずつ自動的にされますし、追加インスリンは単位数に応じボタンを押すだけで補充できます。ポンプの手助けが大きいです。
注射回数が非常に減ることなどのQOLの改善だけでなく血糖コントロールも強化インスリン療法に比べ優れていることが示されています。
インスリンポンプの携行などハードルも高いですが当院でもサポートしますので是非積極的に取り組んでいただきたいと思います。
出産と甲状腺の病気について
ドクターコラム
妊娠中はおなかの中の胎児を受け入れやすくするためお母さんの免疫力は低下します。
しかし出産後はこれが逆になり免疫力が高まります。
甲状腺の病気は自己免疫の病気(体を守る免疫はウイルスなどの体にとって悪いものをやっつけるためにあります。この監視の仕組みが失調しいわば免疫力が高まり、自身の体を傷つける病気)で免疫力が病気に大きく影響します。従って出産後2月から10月ぐらいの間に甲状腺の機能異常が起こりやすくなります。
大多数の場合は次の二つです。破壊性甲状腺中毒症とバセドウ病の増悪か発症です。
むつかしい名前のついている前者ですが甲状腺が炎症を起こし組織が壊れ甲状腺に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中へ漏れ出てホルモン過剰になります。
そのためどきどきしたり汗がよく出たりします。これはすでに橋本病(慢性甲状腺炎)という病気の方に起こります。すでに橋本病と診断されている方は定期診察を受けられていますのでこの変化には主治医の先生がすぐ気づかれると思います。しかし、これをきっかけに橋本病が見つかる方もおられ注意が必要です。
この病気はほとんどが治療が必要なく治りますが正しい診断と経過観察が必要です。
一般の女性の出産後に(上で述べた方がほとんどですが)5~10%の頻度で起こると言われています。
今まで甲状腺の病気と診断されていない方で出産後、体調不良、抑うつやいわゆる〝産後の肥立ちが悪い〟と言われる方は甲状腺の検査をうけられることをおすすめします。
1型糖尿病のインスリン療法を共に考える
ドクターコラム
先だって、糖尿病専門医の有志と懇談する機会がありました。共にテーマを分担して意見交換する集まりです。私に割り当てられたテーマが1型糖尿病のインスリン療法でした。
この機会に改めて考え直したことを書いてみたいと思います。インスリン療法のレベルアップが目的です。
1型糖尿病の方は基礎インスリンを補充するために持効型インスリン(ベーサルインスリン)と追加分泌を補充する超速効型インスリン(ボーラスインスリン)を使用した強化インスリン療法を行っておられます。
それぞれのインスリン量の適正化が血糖コントロールの改善につながります。
ベーサル量は自己血糖測定(SMBG)で早朝空腹時の血糖が目標値(たとえば米国糖尿病学会基準では100-130mg/dl)になるように増減します。
今回数例の患者さんに前回の院長コラムで紹介した持続血糖モニター(CGM)をしていただきました。その結果多くの患者さんで早朝空腹時の血糖は目標内に入っているのに深夜2-3時頃の血糖が200-300mg/dlと高血糖であることがわかりました。ベーサル量を早朝空腹時の血糖値だけで決めるのは限界があると実感しました。
ボーラス量の決定にはカーボカウント応用編が重要です(カーボカウントについては院長コラムのシリーズを参照して下さい)。
これから食べる食事の炭水化物量(カーボ量)をあらかじめ見積もります。それにより上昇する血糖を抑える量を計算することでボーラ量はまず決まります。10gのカーボ量で1単位のインスリン(これをインスリンカーボ比といいます)を注射するということです。
しかしこれだけではボーラス量は足りない場合がほとんどです。と言うのは食前血糖が高い場合が多いからです。先に決めた量では食後血糖は高いままです。そこで登場するのがインスリン効果値ですね。たとえば1単位のインスリンで50mg/dl血糖が下がります。食後血糖が目標値に下がるようにボーラス量を増やさなければなりません。今回気がついたのはこの追加分の必要性が理解出来ず食後血糖が高い方が多いと言うことでした。
カーボカウント応用編の習熟度は患者さんによってまちまちでそれをあげることが課題と思います。
深夜の高血糖の見逃しと食後高血糖の是正が難しいことが1型糖尿病の患者さんの血糖コントロールが困難な原因であると痛感しました。
このように考えるとカーボカウント応用編、CGM、今回は触れませんがインスリンポンプを使ったCSIIが1型糖尿病治療の三大柱だと思います。
是非積極的に取り組んでいただきたいと思います。